蝉の幼虫は成虫になるまでどこで何をしているの?
「セミは土の中で7年暮らしてから外に出て、2週間位で死ぬ」と習って来た人が多いのではないでしょうか。
ところが、この7年というのは間違い、というのが最近わかって来ました。「最近」というのは…
蝉の幼虫は何年土の中?
これまで7年と言われて来たのは、セミの生物学を研究した加藤正世博士が「産卵後7年目にアブラゼミが羽化する」と書いたのを、「=幼虫期7年」と解釈したからではないか、と言われています。
セミというのは人工飼育が難しく、これまで加藤博士の説を実証する手立てがなく、彼の説がそのまま広まっていました。
ところが最近になって技術が発展し、ようやく人工飼育に成功しました。
それによると「ミンミンゼミ/アブラゼミ2~4年・ツクツクボウシ1~2年・クマゼミ2~5年・ニイニイゼミ4~5年」だったそうです。
研究者により若干の違いがありますが、少なくとも7年というのは間違いだということがようやくわかったのです。
さて、この「幼虫期」ですが、厳密に言うとメスが枯れ木に産卵してから孵化するまでに約1年、その後土の中にもぐります。
孵化といってもひよこのように卵が割れて全く違う形になって出てくるのではなく、2ミリ程度の細長い卵のまま足が出て幼虫に変わって行くような感じだそうです。
何から養分を摂っているの?
その後長い地下生活になるのですが、栄養は木の根の樹液から。
幼虫から成虫に変わる時期には大量の樹液を吸います。
人工飼育ではアロエを使うことが多いそうですが、アロエが枯れてしまうこともあるほどだそうです。
といっても万年成長している訳ではなく、成長期は年2回、それぞれ1ヵ月程度。
つまり年に2か月しか成長しないのです。
だから幼虫期間が長いのですね。
実質的な幼虫期間は4~6か月と、他の昆虫と変わらないのです。
しかも、どんな根からでもどのセミも養分を取れるかというとそうではないらしいのです。
研究者によると、観葉植物のユッカの根ではニイニイゼミやツクツクボウシは成虫になれますが、ミンミンゼミは成虫にならなかったそうです。
同じ種類のセミでも土の中にいる期間に差があるのは、気温や養分の質の違いによるものと言われています。
温かい所でたっぷりの栄養を摂って育った幼虫が早く大人になるのです。
同様に、小さい種類のセミのほうが早く成虫になる傾向が見られます。
地下生活中、数回の脱皮をします。
アブラゼミの場合は4回程度。この成長過程で死んでしまう幼虫もいます。
土の中ということはモグラなどの天敵がいますし、冬虫夏草の菌がついて死んでしまうこともあるのです。
幼虫~羽化~成虫に
幼虫は全身が白く、目もないような状態ですが、羽化が近づくと全体が褐色になり、白っぽく大きな目が出来て来ます。
地表近くまで来て更なる成長を待ちながら機会を覗っているようです。
そして土の中から出て来たら羽化の始まりです。
大体夕方に土から出て木に登り、日没になるまで待っています。
スズメバチやアリなどの天敵に襲われる危険性を回避するためだと言われます。
待っているといっても体内では成虫になるための最後の過程が進んでいます。
必要のない器官は死に、飛ぶための器官が発達して分化しているそうです。段々背中が青白くなってきます。
背中が割れて、白い身体が飛び出し始めます。
上体が殻から出て足を抜き出すまでに大体15~30分以内かかり、その後足がしっかり乾燥して固まるまで待ちます。
この時は逆さ吊り状態になっている事が多いです。
その後全身を殻から出し、ゆっくりと羽根を伸ばしながら乾かします。
その後段々色がついて来て、羽化から5時間ほどでほぼ成虫の姿になるようです。
朝には飛び立てるほどになりますが、数日間は殆ど鳴けません。鳴くのはオスだけだそうです。
こうしてようやく成虫になったセミ。寿命は1ヵ月程度と言われています。
リュウキュウアブラゼミで70日という記録もあるそうで、寿命が2週間というのは観察が難しかったところから来る俗説だったようです。
ただ、成虫にも天敵が多くいて、スズメバチはセミの成虫が主食です。
その他クモやカマキリ、鳥などに襲われることもあるようです。
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