秋の七草ってどんな花?
「秋の野に 咲きたる花を 指折り かき数ふれば 七種の花」
(あきののに さきたるはなを およびおり かきかずふれば ななくさのはな)
「萩の花 尾花 葛花 瞿麦の花 姫部志 また藤袴 朝貌の花」
(はぎのはな おばな くずはな なでしこのはな をみなえし またふじはかま あさがほのはな)
山上憶良(やまのうえのおくら)が万葉集で詠んだこの歌の2首目に書かれている花を「秋の七草」と呼んでいます。
※朝貌については、桔梗という説のほか朝顔、むくげ(木槿)という説もあります。
春の七草は栄養摂取のための食物ですが、秋の七草は花そのものを楽しむものです。
多分、冬は野菜が少ないため粥にして栄養が取れるように、ということが重要視され、秋は実りの収穫があり心も豊かになるため、花を愛でる余裕があったのではないでしょうか。
また、野花が咲いている秋の野原を散策しながら、歌を詠むことが古くからおこなわれていたそうです。
秋の七草は初秋を感じさせる植物が多く、夏の暑さが遠のいていくのを知らせてくれます。
七草ってどんな花?
食用や薬用になるものもありますが、基本的には観賞用です。
①萩(ハギ)
マメ科、原産地は東アジア(日本を含む)と北アメリカです。20~30の野生種があります。
高さが2~3メートルあり、その高さを利用して作られた向島百花園の萩のトンネルは有名です。
日本では8月下旬から10月上旬に咲く濃いピンク系のミヤギノハギが一番多く、そのほか名前 の通り白いシロバナハギ、ヤマハギ、ニシキハギなどがあります。
キハギは早く、6月下旬から咲き始めるやはり濃いピンク系の萩です。
②尾花(ススキ)
イネ科で、日本、朝鮮半島、中国、台湾などに生息しています。高さは1~2メートルで、秋頃になると茎の先20~30センチに花穂をつけます。
花穂自体は赤いのですが、白い毛が生えているので白っぽく見えます。
昔からの風習で、十五夜の月見に萩と一緒に飾ったりします。ことわざの「幽霊の正体見たり枯れ尾花」は枯れたススキのことです。
③葛(クズ)
萩と同じマメ科で、日本、中国、フィリピン、インドネシアなどに分布しています。
北アメリカには約140年前日本から運ばれ、一時は庭園用にもてはやされましたが、繁茂力が強すぎたことから有害植物に指定され、現在も駆除作業がおこなわれています。
10メートルにもなるつるが他の木々に巻きつき、根は長芋のように太く1.5mほどの長さになります。8~9月に濃い紫系の花を咲かせます。風邪に効く葛根湯はこの根から作られていて、発汗作用や鎮痛作用があるとされています。
中国では2000年以上前から、日本でも1300年前から薬用として使われていたという記録が残っています。
④瞿麦(なでしこ)
なでしこは撫子とも書き、ユーラシアから南アフリカまでの広い範囲に生息し、約300種あると言われます。
多年草と一年草の両方があります。大体40~80センチになります。
花は白やピンクで花びらは5枚のものが多く、縁がギザギザになっています。
日本に一番多いのはカワラナデシコで、ヤマトナデシコ、常夏といった異名も持っています。
⑤姫部志・女郎花(おみなえし)
万葉集の時代には、おみなえしは色々な文字が当てられていました(姫部志・姫部四・姫押・美人部思など)が、古今集で女郎花(をみなへし)と書かれてからこの文字が使われるようになりました。
日本から東アジアに分布する多年草です。夏から秋にかけ、黄色い小花がまとまって咲きます。
1メートルくらいまで伸びます。根を乾燥させたものは解熱・解毒作用があると言われています。
女郎花とよく似た種類で男郎花(おとこえし)という植物もあります。女郎花より丈夫そうだから、という理由で名づけられたのだとか。
⑥藤袴(フジバカマ)
日本・朝鮮半島・中国に分布していますが、日本では準絶滅危惧種に指定されており、野生のものは殆どなくなっています。
多年草で、水辺に自生します。
栽培品種は1~2メートルになり、8~10月に淡い紫紅色の小さい花が咲きます。
内服すると、利尿作用があり、腎炎などでむくんでいる場合に有効だそうです。
⑦朝貌(キキョウ)
この「朝貌」には諸説ありますが、現在は桔梗であるというのが定説になっています。
ただし、万葉集で歌われた朝貌は野生種で、現在絶滅危惧種に指定されています。
日本・朝鮮半島・中国が原産で、多年草です。
6~9月に主に山野で星形の花を咲かせます。青紫の一重咲きが一般的ですが、白やピンク、二重咲きなどもあります。
桔梗の根にはサポニンが多く含まれ、鎮痛・解熱などに効用があると言われ、中国の漢方薬に多く処方されています。
食用として若芽の酢の物や花の天ぷらにも。韓国では桔梗の根をキムチ(トラジキムチ)にしているそうです。
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