夏の七草ってどんな植物?意外な歴史とは…
日本には四季があり、古代よりそれぞれの季節慈しみ、楽しんできました。
春の七草・秋の七草にもそれがあらわれています。夏と冬の七草は知られていないのですが、夏は多くの植物が最も活発に成長する時期。
当然何かあるのではないかと思って調べたところ、比較的最近の1945年6月に日本学術振興会学術部・野生植物活用研究小委員会によって選定された「夏の七草」がありました。
ただ、それは楽しむためのものではなかったのですが…。
夏の七草はどうやって選ばれたか
夏の七草は全て食料となるものから選ばれています。何故でしょうか。
1945年といえば終戦。日本が第二次世界大戦に負け、8月に日本無条件降伏をした年なのです。
その2か月前の6月に夏の七草が制定されたということは、それだけ日本の食糧事情がひっ迫していたのです。
だから「食べられるものは何でも食料にせよ」ということだったのでしょう。
夏の七草とは
アカザ、イノコヅチ、ヒユ、スベリヒユ、シロツメクサ、ヒメジョオン、ツユクサ
焼け跡にも生えるほど生命力の強い植物ばかりです。食料が既に底をついていた時期に、何とか生き延びるための苦肉の策だったことがうかがえます。
①アカザ(藜)

アカザ科。海外では鶏のエサとして使われることが多く、Fat Hen(太った雌鶏)と呼ばれています。
成長が早く、1m位まで伸びます。中国原産で、葉を茹でて食べることができます。
ほうれん草に良く似た味で、やはりシュウ酸を含むため生食はしません。
茎を乾燥させて虫歯の痛みに、生葉の汁を服用して毒虫の毒を解毒する作用があると言われています。
②イノコヅチ

ヒユ科で、服によくつくので「ひっつき虫」「飛びつき草」とも呼ばれます。
若葉や若穂をてんぷら、油炒め、和え物にして食べることができます。
また生薬としての効能もあり牛膝(ごしつ)と呼ばれます。
利尿・浮腫・リューマチ・関節痛・腰痛などに効くとされています。
ヒカゲイノコヅチとヒナタイノコヅチがあり、効用は若干ちがうようです。
③ヒユ(葉鶏頭)

葉鶏頭の食用品種のことをヒユ(莧)と呼びます。アマランサスも同じ種類です。
発芽がよく、日当たりが良ければどんどん育ちます。葉は最初は緑ですが、段々色づき赤くなっていきます。
若菜や若葉は柔らかいため、アク抜きした後に和えたり油で炒めます。
一方花は鶏のとさかに見立てられますが、乾燥させると下痢止めや子宮出血に効くと言われています。
④スベリヒユ

スベリヒユ科で乾燥に強く、日本全土の日当たりの良い畑や道端に 群生します。根は白く、葉は肉厚。少し紫がかった色です。
花は晴天の午前中のみ開花するそうです。
マツバボタンが同属です。茎葉をゆでてアク抜きをしてから、油炒めや和え物、汁物などに利用します。
利尿効果があり、虫さされの解毒作用もあるとされています。
⑤シロツメクサ

マメ科の植物でヨーロッパ原産。クローバーとも呼ばれています。日本全土の道端に群生しています。
花はかすかにピンクがかった白。若葉は天ぷらにしたり、茹でてから和え物や油炒めに。
花も茹でて酢の物にします。咳や痰を止め、便秘にも効果があります。
⑥ヒメジョオン(姫女苑)

キク科で北米原産。テツドウグサの別名があるように、鉄道沿線を中心に繁殖しました。
現在はどこにでもある雑草です。若い芽を採取し、塩を入れた熱湯で軽く茹でてからアク抜きをし、お浸しや和え物、油炒めなどにします。
若い葉はそのまま天ぷらにしても美味しいそうです。利尿や結石の除去に用いられています。
⑦ツユクサ

ツユクサ科で、ホタル草、帽子花、月草などの別名があります。日本全国の野原や道端の湿った所に生えます。
早朝に開花し午後にはしぼんでしまう所から、英語ではDayflowerと呼ばれています。
アクが少ないので、生の葉や茎をそのまま食べたり軽く茹でてサラダや和え物にします。
下痢止めやむくみ取り、解熱に効果があるとされ、乾燥させたものは鴨跖草(おうせきそう)と呼ばれる生薬です。
食べられるとは言っても、茹でたりアク抜きをしないといけないものが殆どです。本当に食糧事情が悪くなっていたことがはっきりわかりますね。
実は、夏の七草と呼ばれるものはもう一つあります。昭和初期、園芸家の勧修寺経雄が
「涼しさは よし い おもだか ひつじぐさ はちす かわほね さぎそうの花」
という若を詠んでいます。よし(葦)、い(藺草:イグサ)、おもだか(沢瀉・面高)、ひつじぐさ(未草:スイレン)、はちす(蓮:ハス)、こうほね(河骨)、さぎそう(鷺草)はすべて水辺の植物です。
涼を呼ぶこういった植物で、夏の暑さからしばし逃れたのでしょう。
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